丸いケーキが1つあります。「相手の取り分より少なくもらうのはイヤだ」と考える2人が、このケーキを分配することになりました。さて、両者から文句が出ないように分けるには、どうしたらよいでしょうか。
この問題は、ケーキを正確に2等分することが主眼ではありません。だから、分度器などの道具も、幾何学の定理を持ち出す必要もありません。あくまでも“2人が納得のいくように分ける”ことが肝心なのです。
この問題に対する答えは、紀元前から既に知られていたといわれています。それは、「2人のうちの1人(Aさん)が、自分が2等分だと納得できるようにケーキを切る。そして、もう1人(Bさん)が2分割されたケーキの好きな方を選ぶ」という方法です(以下、この方法を古典的方法と呼ぶことにします)。こうすると、Bさんは好きな方を選べるので、自分の取り分は半分より小さいと文句を言うことはできません。また、Aさんは「自分が2等分だ」と思うように2つに切り分けたのだから、切ったケーキのどちらが自分の取り分になっても、文句が言えないというわけです。
このような分配の問題は単なる数学の中の問題という以上に、実生活の中でもさまざまな場面で起こりうる興味深い問題です。人数が2人ではなく、3人だったら、4人だったら…、あるいは、分ける対象がケーキという単一のものではなく、複数の孫たちが思い入れのある形見の品々を分配するとしたら…といった具合に、さまざまなバリエーションが考えられます。
page: 2
人数が3人だったら、どう分ければよいか。これについては、いくつかの方法が考えられていますが、一番古い記述は1944年の、ポーランドの数学者、フーゴ・シュタインハウスによる次の方法だとされています。
(1)A、B、Cの3人の中の1人Aが、ケーキを1/3の量(これをZとします)と2/3の量になるように分ける。
(2)BはZを見て、それがケーキの1/3以下の量だと思うなら何もしない。1/3より大きいと思うのなら1/3になるようにZを削り、1/3にしたものをZ’とし、削ったケーキは傍らに置いておく。
(3)CはZまたはZ’を見て、それが1/3以上だと思うなら自分の取り分にし、1/3未満だと思うなら取らない。
(4)(イ)(CがZまたはZ’を取った場合)
AとBの2人は残されたケーキ(削って傍らに置かれたものがあれば、それも含める)を古典的方法で分配する。
(ロ)(CがZ’を取らずBがZを削ってZ’にしていた場合)
BがZ’を自分の取り分にし、残されたケーキについてAとCの2人が古典的方法で分配する。
(ハ)(CがZを取らず、BがZを削っていない場合)
AがZを自分の取り分にし、残されたケーキ(傍らに置かれたものも含める)についてBとCの2人が古典的方法で分配する。
page: 3
この方法が、3人が文句のいえない分配方法になっていることは各自確かめてください。この方法以外にも、こんな方法もあります。
(1)AとBが古典的方法で、ケーキを2分し、互いに1/2以上と思う量を取り分にする。
(2)A、Bそれぞれが、自分の取り分を3等分と思う量に分け、2人それぞれが、そのなかのひとつをCに選んで取ってもらう。
これも、3人が文句を言えない分配法になっています。しかし、これらの分け方だと、たとえば、Aは1/3以上の量を確保したとは思っても、Cの取り分の方が自分より大きいんじゃないかというねたみが生じる場合があります。それを解消する分け方を考えなければ…と考えた人たちがいました。そのねたみを生まない分配法を最初に考えたのが、1960年代初めのジョン・コンウェイとジョン・セルフリッジです。その分配法は難しくはないのですが、書くと長くなるのでここでは割愛します。さらに、1995年には、スティーヴン・ブラムスらがn人のあいだで分配するねたみを生まない分配法を発表しました。
page: 4
こういった理論をもとにした“当事者たちが納得する財産や資産の公平な分配方法”というものに対して、ニューヨーク大学が特許を取っているのだそうです。そしてアメリカでは、その方法が離婚裁判の際の財産の分配という身近なところから、中東の紛争解決という国際舞台でまで、幅広く活用されていると聞いています。
| — | 【秋山仁のこんなところにも数学が】(81) ねたみをうまない上手な分配法 (1/4ページ) - MSN産経ニュース (via kml) (via happs) (via otsune) |